「うちの子、学校で全く話せないんです」
「家では普通に話すのに...」
お子さんが場面緘黙症で悩んでいませんか?
私は公立小学校で28年間、養護教諭(保健室の先生)をしてきました。
保健室で、場面緘黙症の子どもたちと向き合ってきました。
その経験から、緘黙のお子さんに何が起きているか、親ができる対応をお伝えします。
---
学校で場面緘黙症のお子さんには時々出会います。
500人に1人ぐらいはいらっしゃるそうです。
親や周囲の関わり方の大切なポイントはお子さんの 不安を和らげ、安心感を持ってもらうことです。
この問題は、決して「お子さんのわがまま」や「親御さんの育て方のせい」ではありません。
お子さんに何が起きているかそして何が大切か見ていきましょう。
場面緘黙症(かんもく)とは?
場面緘黙症とは、家庭では話せるにもかかわらず、学校などの「特定の社会的状況」では、一貫して話すことができなくなる不安障害の一つです。
緘黙のお子さんに何が起きているか
緘黙のお子さんは話さないのではなく、話せない
家では話せるのに、特定の場所(学校など)で話せなくなる。
これは、お子さんが自分の意志で話さないのではなく、体が話せない状態になっているのです。
闘争・逃走反応(Fight-or-Flight Response)
人間の体は本当によくできています。
過度な不安や恐怖は、脳に備わった「闘争・逃走反応(Fight-or-Flight Response)」を過剰に働かせます。
学校という環境が脳が「危険な場所」と認識すると、非常ベルが鳴り響いた状態になります。
非常ベルが鳴っているときは、会話よりも危険に対する「戦い」や「逃走」に備えるため、筋肉を緊張させる必要がありますよね。
のどが詰まったように声が出ない
あるお子さんが
「のどが詰まったようになり、声が出せない」
と話していたのは、まさに声帯周辺の筋肉が極度の緊張によって硬直している証拠です。
お子さんは、体全体で危機に立ち向かっているといえます。
のどが詰まったように声が出ないのは、お子さんが自分の意志で拒否しているわけではなく、体が勝手に防衛反応を起こしている証拠です。
声を出す機能よりも、「今を生き延びること」を最優先しているのです。
「学校に行けていることに安心しない」
緘黙のお子さんは“不登校になりにくい”ともいわれています。
それは身を守る方法を既に実践しているから、学校には行くことができるということのようです。
でもそれは、お子さんは常に非常ベルが鳴っている学校にいるということ
“常に身を守っている”
ということになります。
学校に行っているからいいという問題ではないのです。
むしろ、このような状態にいるお子さんの心は大きな負担がかかっているでしょう。
不登校のお子さんよりもむしろ心配だなと感じます。
学校は声の大きい人が優遇されるところ
緘黙のお子さんは、授業中に発言せずとも、静かに座っているため、学校からは「手がかからない子」として見過ごされやすい面があります。
配慮は必要ですが、問題行動がないため放置されがちです。
話さないだけで日常生活には支障をきたしていないからと思われているかもかもしれません。
でもそれは「大人目線」です。
お子さん目線で考えてみれば学校という、積極的な声の大きい人が優遇される場で
(そうでない学級ももちろんあります)
意思を表現しないのです。
きっといろんなことが、不本意な形で進んでいるでしょう。
さらに興味本位で
「なぜ話さないのか?」
悪意に満ちて
「『アー』といってみて?」
など詰め寄られています。
驚くべきことは、教師の中でも
「挨拶だけでも、いいましょう!」
と、強制している人もいます。
そもそもお子さんは生活に支障をきたしているから話せないのです。
場面緘黙症と不登校の関係
緘黙のお子さんが話をしないことは、お子さん自身が不安からすでに身を守っている状態と考えられています。
ですので、今の状態でうまく身を守れていると考えるなら、不登校にはなりにくいといわれています。
しかし“身を守っている”ということですから、ギリギリの状況だともいえます。
学校での環境やクラスの状況、先生の対応などの情報を集めていきたいところです。
不登校にならなくても、娘さんは学校ではどうしても受け身であることが多くなっています。
学校生活においては、いろいろな機会を失っているといえます。
お子さんの意思を確認して進めてもらえるように学校へは働きかけが必要です。
親の関わり方:3つの原則
非常ベルを止める
お子さんの関わりで最も大切なのは、
「不安を和らげ、安心感をもってもらうこと」
です。
お子さんにとって、今いる場がどのような状態か
(非常ベルが鳴り響いていないか)
を確認し、非常ベルを止めることを目指しましょう。
「話す」ことにこだわらず、コミュニケーションを最優先
その上で、「人と話したい」というお子さんの意思が芽生えることを目指します。
これは、コミュニケーションするためのスタート地点に立つ、というイメージです。
大切なことは「話すこと」ではなく、相手とコミュニケーションをとることです。
どんな方法でもいいのです。
話す以外のコミュニケーション方法の例
- 筆談
- ジェスチャー・身振り
- 「はい」「いいえ」で答えられる質問(クローズドクエスション)
- うなずき
- まばたき
- ゆびさし
専門家との連携
不安の解消には、個々によってアプローチが違います。
不安が強いお子さんに無理強いはできませんが、 場面緘黙症については、早期の医療介入が有効というデータもあります。
お子さんにとって一番いいタイミングで、専門家とつながることをおすすめします。
緘黙のお子さんに伝えたいこと
無理に話す必要はないです。
でも、もし困っていることがあるなら、あなたの良い方法で知らせてほしいです。
親御さんへ:元養護教諭から伝えたいこと
話をすることを目指すのではなく、安心することを目指します。
お子さんの繊細さを大切にしてあげてください。
私自身、緘黙のお子さんとの関わり方については本当に試行錯誤の連続で、小さな反応を一生懸命探していました。 でも、数年後に再会したお子さんが「先生!」と駆け寄ってくれた時は、本当にうれしくて・・。素敵な優しい声でした。
この経験から、大切なことは「話をすること」ではなく「気持ちをつなぐこと」だと強く感じています。
ゆっくりそっとお子さんに寄り添いましょう。
※架空の事例です
学校で全く話さなくなっていると先生から連絡がありました。
かん黙かもしれません。
もう2か月になるようです。
家では普通に話しているので、このまま様子を見てもいいかなぁと思っているのですが。
自然に治りますよね?
緘黙は、不安から自分を守るために話せなくなってしまうというものですから、不安が取り除かれればまた話すようになることもあります。
しかし「話さない」ことに慣れてしまい、経過が長くなることがあります。
2か月ということなら医療機関などに行かれることをお勧めします。
早期に正しい対応をすることで、予後がいいという研究が出ています。
また不安の原因となるものが、お子さんの素質にあるのでしたら、大人の適切な対応を医療機関や学校と整理しましょう。
このまま不登校になることはありますか?
お子さんにとっては、学校は危険な場所ということです。
そこで声を出さないで意思表示をしないとなると、さらにお子さんにとっては居心地の悪い空間になりそうです。
娘さんが学校で話せないことは尊重すべきことですし、無理に話す必要は全くありません。
が、貴重なお子さんの時間ですから、何か手立てを考えたいと思うのです。
学校ではお友だち数人がいろいろ助けてくれたり、うなずくだけでうまく生活できているようです。
娘は、この間、みんなと話したいと言っていました。
でも話せないのだそうです。
お子さんが話したいと思っていることは、とてもよい方向です。
よいお友だちが周りにいるときは、チャンスといえます。
話すことにはこだわらないで、コミュニケーションをとることを楽しんでほしいのです。
手を使ってもいいですし、目で訴えてもいい。
カードや指差し、タブレットなど、話さなくてもコミュニケーションをする方法はたくさんあります。
『意思を伝える』こと。
そして、その意思をお友だちが『受け止めてくれること』。
それを楽しんでほしいのです。
それから、お子さんに話したい気持ちがあるなら
『話すこと』
のウオーミングアップを、始めるといいですね。
家ではお話しされるとのことですが、その範囲を広げていきましょう。
はじめは、緊張しない家族と話しをする機会を増やしていきます。
次に祖父母、親戚、近所の人、お店の人などなど。
ほんの少しずつ
- 人を変えたり
- 人数を増やしたり
- 場所を変えたり
などバリエーションを増やします。
スモールステップで進めます。
決して無理強いしません。
娘さんのペースで進めます。
|
一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。 |

コメントをお書きください