「パニック発作とは」
『苦しい』
『息ができない』
顔は青ざめ、胸を押さえ、今にも倒れてしまうのではと感じるほど…。
親として、その姿を見るのは本当に怖く、不安になる瞬間です。
それが“パニック発作”です。
とても強い症状に見えるので『大きな病気では?』と心配になるかもしれません。
けれども、これは体が命を守るために働く仕組みが、少し敏感に反応しているだけのこと。
決して
『心が弱いから』でも『病気だから一生続く』でもありません。
理解できれば、お子さんの苦しみを少し安心して見守れるようになります。
ここでは、パニック発作のしくみと、親として知っておきたいサポートのヒントをお伝えします。
パニック発作の症状
パニック発作とは、私たちが日常的に使う焦りや混乱の「パニック」とは少し違っていて、他人なら怖いと思わない状況で、急に不安、恐怖、不快感を強く感じる発作が起きることでもう少し深刻な状況です。
パニック発作の症状は
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① ドキドキ、心臓がバクバクする
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胸がドキドキして、心臓が飛び出しそうに感じます。
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② 汗がたくさん出る
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手にじっとりと汗をかいたり、顔から汗が噴き出したりします。
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③ 体が震える
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ブルブルと体が震えたり、腕や足がガクガクしたりします。
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④ 息が苦しく、うまく吸えない感じ
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息がうまく吸えず、喉が詰まったように感じます。
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⑤ 喉が締め付けられる感じ
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誰かに首を絞められているように感じたり、息が止まるような感覚になったりします。
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⑥ 胸が痛い、胸が締め付けられる
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胸がギューッと締め付けられるような痛みや、重いものが乗っているような圧迫感があります。
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⑦ 吐き気や気持ち悪さ
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お腹が気持ち悪くなったり、吐き気がしたりします。
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⑧ めまいやふらつき、気が遠くなる感じ
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頭がクラクラして、まっすぐ歩けなくなったり、目の前が真っ白になったりします。
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⑨ 寒気または熱い感じがする
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急にゾクゾクと寒気がしたり、体中がカーッと熱くなったりします。
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⑩ 体がしびれたり、ピリピリする
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手足の感覚がなくなり、針で刺されているようにピリピリしたりします。
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⑪ 現実ではないような感じがする
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周りの景色や音がぼやけて、夢の中にいるように感じたりします。
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⑫ コントロールできない感じ
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自分の行動や気持ちがコントロールできなくなり、どうにかなってしまうのではないかという恐怖に襲われます。
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いくつかの症状が現れ、10分ほどでピークに達してその後消えていきます。
この感覚はとても怖く、苦しいものです。
ですからまた起きたらどうしようか(予期不安)と感じるもの当然かと思いますし、発作が起きそうな状況や場所を避けたくなることも(広場恐怖)納得できる気持ちの流れかと思います。
パニック発作の症状が起こるわけ
脳の中にある扁桃体という危険を知らせる警報機が過敏になっていて、小さな危険を察知して鳴り響いててしまう状況がおきています。
危険があれば、体は対応しなければいけませんので、「戦う/逃げるモード」に切り替わります。
『戦う/逃げるモード』とは、交感神経のオンの状態です。
狩りをしていた時代であれば動物と対面していた時のモードです。
パニック障害の症状には理由がはっきりあるわけです。(敵がいると警報が鳴っています。)
扁桃体の警報を受けた体は、交感神経を一気に「オン」の状態にします。
これにより、体は動物と対面した時のような「戦う/逃げるモード」に入り、心臓、肺、筋肉に指令が送られます。
この指令こそが、これから説明する症状の一つ一つに理由を与えています。
① ドキドキ、心臓がバクバクする(危険と対面するにはたくさんの酸素が必要ですから、酸素を運ぶ血液がたくさん必要です。)
② 汗がたくさん出る(体は興奮しますので、熱を下げるために汗が出ます)
③ 体が震える(筋肉が臨戦のために緊張状態を維持しています。
④ 息が苦しく、うまく吸えない感じ(たくさん酸素を取り込もうと呼吸が速くなる結果、二酸化炭素が減りすぎてしまい、息苦しさやしびれなどの不快な症状を引き起こします。)
⑤ 喉が締め付けられる感じ(自律神経の影響や呼吸の変化によって、喉に詰まりや圧迫感を感じています。)
⑥ 胸が痛い、胸が締め付けられる(心臓が強く動き、胸の筋肉が硬くこわばっているからです。)
⑦ 吐き気や気持ち悪さ(戦うために、消化活動が一時的に抑えれれるからです。)
⑧ めまいやふらつき、気が遠くなる感じ(呼吸が速くなりすぎて、脳への血流のバランスが崩れているからです。)
⑨ 寒気または熱い感じがする(体温調節の機能が一時的に乱れているからです。)
⑩ 体がしびれたり、ピリピリする(手足の血流が変化し、神経に影響を与えているからです。)
⑪ 現実ではないような感じがする(脳が、現実ではないかのような感覚を作り出し、危機から逃れようとしているからです。)
⑫ コントロールできない感じ(体と心が一致せず、自分のコントロールを失っているように感じるからです。)
これらの症状は、体が本能的に“守ろうとしている”反応です。
ただ、パニック発作は、警報機の過敏さのために引き起こされていますから、実際には危険なことは起きません。
なぜパニック発作が起きるか
パニック発作が起きるのは、脳の中の「危険を知らせる警報機」が少し敏感になっているためです。
日々の小さなストレスや、不安、うまく言葉にできない気持ちが積み重なると、警報機は休む間もなく働き続けます。
すると、本当は安全な状況でも過敏に反応して、発作の症状が出てしまうのです。
このような誤作動は、ストレスや不安によって引き起こされます。
呼吸と筋肉の弛緩がポイント
先ほどのパニック障害の症状には理由ですがじっくり見ていただきますと、呼吸・酸素と筋肉の緊張というフレーズが多く出てきていることにきがついていていただけるのではないでしょうか?
実は、パニック障害の引き金にもそして症状にも呼吸・酸素と筋肉の緊張が大きく関係しています。
つまり呼吸法と筋肉のリラックス法を身につけることがとても大切なスキルになるのです。
呼吸法について
まずは呼吸法の考え方をご理解ください。
パニック障害の方や緊張が強い、または不安を感じやすい方は、呼吸が浅く、早くなりがちです。
こういう呼吸は、交感神経が高まりやすくなります。
またこれが続くと二酸化炭素が減り、酸素と二酸化炭素のバランスが崩れることにより、体が危機を察知しやすくなる。
この二酸化炭素のバランスの崩れが、体に強い不快感を与えることで、不安のループをさらに悪化させることにつながります。
原因と結果が絡み合い、ますます交感神経がオンになりやすくなるというわけです。
つまり日ごろから呼吸を深くそして整えることが大切なのです。
呼吸法はいろいろあってやりやすい方法を使ってください。
ポイントは
- 吐く息を長く
- 回数の目安は一分間に6から10回ぐらい
呼吸法をいくつか紹介しますね。
○腹式呼吸
腹式呼吸は、いつでも、どこでも簡単にできます。まずは、椅子に座るか、ベッドに横になるなど、リラックスできる姿勢をとってください。
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息をゆっくり吐き出す
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まず、肺に残っている空気をすべて口からゆっくりと吐き出します。
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このとき、お腹をへこませるように意識してください。
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吐く時間は、吸う時間の2倍を目安にします。
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鼻から息を吸い込む
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(例:4秒かけて)鼻からゆっくりと息を吸い込みます。
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このとき、お腹が風船のようにふくらんでいくのをイメージしてください。胸ではなく、お腹を膨らませるのがポイントです。
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息を止める
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(例:4秒間)吸い込んだ息を体の中にためておきます。
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肺に酸素がしっかり行き渡るのをイメージしてください。
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口からゆっくり吐き出す
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(例:8秒かけて)口からゆっくりと、細く長く息を吐き出します。
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このとき、お腹がへこんでいくのを感じてください。
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この呼吸を、数回繰り返します。秒数はあくまで目安ですので、ご自身のペースに合うように調整してください。
○パニック症が起きそう、不安が強いときはの呼吸(3-3呼吸)
①腰を下ろすか、何かにもたれかける
②息を止めて10秒そして静かにゆっくり息を吐きましょう。「リラックス~(なんでもいいですよ。あなたの力が抜ける言葉で)
③3秒吐く、3秒吸う。「リラックス~」
④10回続けたらつまり1分たったら②③④を繰り返す。
筋肉のリラクゼーションについて
私たちの体の筋肉は、いつもいろいろな動きをするために緊張しています。これは大切なことですが、動きが終われば筋肉は緊張を解き、リラックスすればいいはずです。
しかし、緊張や不安が続くと、いつも体が緊張していることが続くことがあります。この状態は、肩こり、頭痛などの体の不調を起こすだけでなく、体を『戦う/逃げるモード』にする交感神経を高めることにつながります。
ですから、意識的に体の緊張を解き放つリラクゼーショントレーニングが大切なのです。
リラクゼーショントレーニングも色々ありますが今日は「ぎゅーっ、だらーん法」を紹介しますね。
これで緊張した筋肉を緩める練習をしましょう。
〇硬くなった体をゆるめる「ぎゅーっ、だらーん」
不安が起きると、体は『戦う/逃げるモード』になり、筋肉が硬くこわばります。この体の緊張を解きほぐすことが、心の不安を和らげることにもつながります。
ここでは、いつでも、どこでも簡単にできる「ぎゅーっ、だらーん」というリラックス法をご紹介します。
①ぎゅーっと力を入れる
まず、体の一部分に、5秒間、ぎゅーっと力を入れます。
②だらーん、と力を抜く。
次に、一気にだらーん、と力を抜きます。
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「はい、力を抜きます!」と心の中で言って、すべての力を抜いてください。
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筋肉がふわっと緩み、血が巡っていく感覚を味わいましょう。
〇体の各部位で試してみましょう
この方法を、体の各部位で試してみてください。
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握りこぶしをぎゅーっと、そしてだらん
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力こぶを作って
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両肩をすぼめて
- 目と口をぎゅーっと閉じて
- 肩甲骨をよせて
- お腹をへこませて
- 太ももに力を入れて
- 足の甲を持ち上げて
この練習を重ねることで、自分で体の緊張に気づき、それを緩めるスキルを身につけることができます。
さいごに
今回は発作のの引き金にもなりうる「呼吸法」と「筋肉リラクゼーション」についてお知らせしました。
パニック発作は、脳の警報機である扁桃体が少し敏感に働きすぎているサインです。
しかし、これは決して「心が弱いから」でも、「一生続く病気」でもありません。
お子さんの体が必死に命を守ろうとしている証拠なのだと理解してください。
実際にパニック発作は医師や専門家が適切にかかわれば早期にコントロールできる病気といわれています。
発作が起きたときに親御さんが慌てず、「大丈夫、必ず治まる」という安心感を伝えていきましょう。
お子さんがパニックの波を乗りこなす力を身につけること、そして症状が起きても「大丈夫だ」と安心して向き合える感覚を育むことが大切なのです。
慌てずそばにいてあげてくださいね。