お子さんが学校を休んでいて、ゲームばかりしていて心配していませんか?
私は公立小学校で28年間、養護教諭(保健室の先生)をしてきました。
保健室には、学校に行っていない子どもたち、学校がしんどい子どもたちやその親御さんともたくさんお話をさせてもらいました。
その中でゲームのことが話題になることも多かったです。
その経験から、不登校のお子さんとゲームの関係、時間制限より大切なことをお伝えします。
不登校の子どもがゲームをする理由
「長時間ゲームをしている」
「注意してもやめない」
という親御さんの心配の声をよくお聞きします。
たしかにゲームを長時間することは親としては気になるところです。
しかし、どんなことにも共通することですが、禁止や制限といった"強制力"でお子さんを縛るには限界があります。
強い強制力でお子さんを縛っていると、その先にはお子さんとの関係の悪化や断絶が待っています。
今、不登校という状況にあるお子さん。
親御さんには一番の味方でいていただきたいのです。
保健室で、ある中学生の男の子がこう言いました。
「先生、僕がゲームやってるのは逃げてるからって親は言うけど、逃げて何が悪いんですか?学校で嫌なことばっかりなのに」
そうです。
ゲームを問題視するよりまずは、学校を整えるのが先ではないでしょうか?
ゲームの世界は、お子さんにとって安全な場所
ゲームの世界には、こんな特徴があります。
- どんなゲームをするか、お子さんに主導権がある
- ゲームをどうやって攻略するか、お子さんが決める
- 嫌になればリセットボタンを押せる
- そして気が向けば再チャレンジできる
- 何かトラブルがあっても現実社会のお子さんは痛くもかゆくもない
- 見方を変えればゲームに反応しているだけで何も考えなくていい
- 何より楽しい
- 何もかも忘れて没頭できる
お子さんの心は、ゲームの世界で完全に守られます。
心を癒すには最適な場所といえます。
骨折しているお子さんに、安静にしているとギブスをしていると筋力が落ちるからといってギブスを外して歩く練習をさせたりしません。
骨折した骨がくっついて、それからリハビリをゆっくりとはじめるわけです。
考え方としては、同じです。
まず安静にして骨がくっつくのを待つように、心も修復されるまで安静にすることが必要です。
お子さんの心は、今どのような状態でしょうか?
ゲーム時間の制限が逆効果になる理由
「ゲーム時間を減らす」ではなく「お子さんの健康的な時間を増やす」ことに視点を置きます。
そもそも健康な生活とはどういうものでしょうか?
1. お子さんの心の状況はいかがでしょうか
不登校に至る過程で、心にダメージを受けてはいないでしょうか。頑張りすぎて心のエネルギーは枯渇していませんか。そもそも体と心に医療を受けるべき病気はないですか。
心が疲れ切っているとき、ゲームの世界は心を修復する場所になります。
2. お子さんがゲームの世界から戻ってくるのにふさわしい世界でしょうか
不登校になった経過の中で、お子さんは学校または社会(大きく言えば世界)をどのように受け止めておられるでしょうか。
学校(または社会)は、
- 正しいことが行われている
- きちんと努力を認めてくれる
- 秩序が保たれている
ととらえられているでしょうか。
学校(つまりは社会)に正義があれば、心の状態が落ち着けば自分の将来のことを考え「このままではいけないな」と思うこともできるようになります。
しかし
「学校は正しいことをしない」
「隠ぺいした」
「嘘をついた方が得だ」
「先生はえこひいきをする」
「自分の努力を認めてもらえなかった」
「叱られるばかり」
などと思っていれば、
- 「どうだっていい」
と投げやりな気持ちになることは自然なことではないでしょうか。
そもそも現実問題に向き合うことは苦しくてつらいことです。
ゲームの世界に逃げ込むのも当然といえます。
例えばいじめであれば、先生たちはあやふやな対応をしている。
そして謝罪がないまたは誠意がない対応。加害側は何も変わらず、楽しく学校にいっている。
例えば発達的な課題があるなら、努力をしてもどうしてもやるのが難しい課題がある。
それを叱られたり、バカにされたりする友だちや先生がいる。
すべてを完全に解決しなければいけないわけではありません。
しかしせめて先生、親といった主要な大人がお子さんに何が起きたかを正しく理解している、そして解決に向けて尽力している、という方向性は大切です。
お子さんに自信をもって
「ゲームをやめて、学校(社会)に戻ってきて」
と言えますか?
お子さんの心、そして学校(社会)の状況いかがでしょうか。
1と2は100点でなくてもいい。
お子さんの心が100%回復するのは難しい時もあります。
そして学校(社会)が100%素晴らしい世界であるなんてありえません。
ただ、ご理解はください。
そうすればやみくもに
「ゲームはダメ」
「一日何時間まで」
ということにはならないのではないでしょうか。
「ゲーム脳」は科学的に否定されています
実はゲームが体に悪いという科学的なデータはありません。
2002年にある研究者が出された「ゲーム脳」という考え方がとても話題になりました。
ゲームをしていると認知症の方と同じ脳波が出るとかなんとか!
しかしのちにデータの取り方が不十分だと検証されています。
今ではエセ医学(疑似科学)に分類されているのです。
ゲームで能力が向上する研究結果も出ています
逆に、ゲームで能力がアップするという研究結果が出てきています。
アメリカの研究チーム(2022年)
5,374人の子どもを対象にした大規模研究です。ゲームをする時間が長い子どもは、知能テストで高い成績を示すことが明らかになりました。
ジョージア州立大学の研究(2022年)
ゲームプレイヤーは意思決定能力が優れており、脳の特定部位の活動も活発であることが判明しています。
ドイツの研究チーム
健康な24歳の男女48名に2か月間1日30分スーパーマリオ64をやってもらった後、脳の状態を確認した結果、記憶をつかさどる右海馬、右前頭前皮質、および小脳の灰白質の細胞の量が多くなっていました。
つまり、記憶力が高まったということです。
さてこのような研究の結果をどう読み取るかは本当に難しいことです。
そもそもの脳は個性が大きいのですから、同じ時間、同じゲームをしたとしても同じ影響を受けるわけではないからです。
今の子育てに「ゲームなし」は現実的ですか
今の日本の社会は、
- 今や子どもがやりたいことをやれる場所はありません
- 子どもが遊べる空き地なんて存在しません
- ほとんどの公園で球技は禁止されています
- 田んぼに入ると学校に電話が入ります
- 夏の外は命に係わるくらい暑くなります
- 時々、いや頻繁に不審者がでます
子どもたちは家の中で遊ぶしかない。そして習い事や塾のある子は、細切れの時間しかないのですが、ゲームなら細切れの時間でも十分楽しめます。
ゲームほど今の子どもたちの生活にぴったりした遊びはありません。そして何より子どもたちはゲームが大好きなのです。
ゲームありきの子育てにシフトするしかないと私は思っています。
ゲーム障害について知っておくこと
WHO(世界保健機関)は「ゲーム障害」を2019年に国際疾病分類に加え、2022年1月から正式に発効しました。
診断にあたっては問診で次の4つの症状を確認します。
- ゲームをする時間をコントロールができない
- ほかの生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先する
- ゲームによって問題が起きているにもかかわらずゲームを続ける
- 学業や仕事、家事などの日常生活に著しい支障がある
上記の4項目のすべてが当てはまり、12か月以上続く場合に「ゲーム障害」と診断されます。ただし、この4つの症状がすべて当てはまり、しかも重症である場合には、継続時間が12か月よりも短くてもゲーム障害と診断されることがあります。
ただし、このゲーム障害の認定については、専門家から「科学的根拠が不十分」との声も上がっており、議論は続いています。
一番大切なこと|お子さんと対立しない
不登校のお子さんが学校などに行かず、ゲームに多くの時間を費やしている。
そういうお子さんを親御さんは心配している。
それはお子さんを大切に思うからこそ。
元養護教諭として、28年間多くの子どもたちを見てきて思うことがあります。
決してお子さんと対立しないでください。
本末が転倒します。
一番お子さんに伝えていただきたいことは、お子さんを大切に思っていることです。
その上で、これからの新しい世界を歩いていくお子さんに
「どうゲームと付き合うか」
知恵を絞り、お子さんに伝えていかなければなりません。
保健室では、ゲームのことで親と対立している子どもたちをたくさん見てきました。
その子どもたちは皆、親の言っていることはわかっているのです。
でも、学校のことを考えるのが苦しくて、ゲームの世界に逃げるしかなかったのです。
まずはお子さんの話に耳を傾けてください。
決めつけないで、お子さんの話を聞いてみましょう。
まとめ
不登校のお子さんとゲームについて、大切なポイントをお伝えしました。
- ゲームの世界は、お子さんにとって心を守る安全な場所
- 時間制限よりも、お子さんの心の状態と学校の状況を考える
- 「ゲーム脳」は科学的に否定されています
- ゲームで能力が向上する研究結果も出ています
- 一番大切なことは、お子さんと対立しないこと
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一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。 |
